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東日本大震災で命をつないだ「デーデ」がウクライナへ。日本とキーウを結ぶ“鉄道平和授業”を実施

東日本大震災で命をつないだ「デーデ」がウクライナへ。日本とキーウを結ぶ“鉄道平和授業”を実施 特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトのプレスリリース

出典: 特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトがPR TIMESで配信したプレスリリースの原文を、Zero Press が転載して掲載しています。

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 特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(代表:中村雄一/千葉県松戸市)は、2026年9月、ウクライナの首都キーウと西部都市リビウで「なかよし鉄道・ウクライナ未来のまちづくりプロジェクト」を実施しました。

 日本全国から寄せられたNゲージ、岐阜県安八町の子どもたちを中心に集められたレゴブロック、ブラックマヨネーズ吉田敬氏提供の「どうかしてるぜ基金」で購入したミニ四駆などを活用し、戦争下の子どもたちが自分たちの暮らしたい未来のまちを考え、設計し、つくる平和教育です。

 実装地は、キーウの鉄道模型・ミニチュア博物館「MINILAND.UA」、ブチャ出身のデュマ氏が子どもや退役軍人を支援する教室、リビウ市立東洋言語・東洋武道中等教育学校「ブドーカン」の3カ所です。

 今回、その活動から生まれた、日本とウクライナを結ぶもう一つの物語を報告します。

 日本からウクライナへ渡ったのは、東日本大震災で被災地へ燃料を届けたDD51形ディーゼル機関車のNゲージ模型。ウクライナから日本へ託されたのは、中村雄一代表と中村里英事務局長が9月5日にキーウからリビウへ移動する際に実際に乗車した、ウクライナ鉄道の旅客車両を再現した模型でした。

両国が交換したのは、単なる車両ではありません。そこには、その列車に乗った人、動かした人、到着を待った人、困難の中を生き抜いてきた人々の記憶が載せられています。

「一つひとつの列車に物語がある」

この共通認識から、鉄道に刻まれた人々の「生きた証」を次世代へ伝える、新たな国際共創が始まりました。

1つ1つの車両にはSTORYがある

■戦争下の子どもたちが「未来のまち」をつくる

 「なかよし鉄道・ウクライナ未来のまちづくりプロジェクト」は、戦争下にある子どもたちを、支援を受けるだけの存在ではなく「これからの社会をつくる主体」として捉える平和教育です。

 子どもたちはNゲージの線路をつなぎ、その周囲にレゴで家、学校、病院、公園、発電施設などをつくりました。

 駅をどこに置けば、子どもたちは安全に学校へ行けるのか。負傷した人を、どのように病院へ運ぶのか。停電しても、まちを動かすことはできるのか。高齢者や障害のある人も安全に移動できるまちとは、どのようなものか。ウクライナの子どもたちは戦争によって生じている現実の問題を、「未来のまちをつくる問い」へ変え、話し合い、試し、つくり直していきます。

 鉄道模型は単なる遊び道具ではありません。交通、物流、電気、防災、医療、福祉、地域社会のつながりを、一つの風景の中で考える教育教材です。一本のレールを置くことは、「誰と誰をつなぐのか」を考えることでもあります。

 戦争によって「今日を生き延びること」に追われる子どもたちへ、「自分たちはどのような明日をつくりたいか」を考える時間を取り戻す。それが本プロジェクトの目的です。

駅にお気に入りのフィギュアを置くウクライナの子どもたち

■原点は、柏市立名戸ケ谷小学校の校長室

 本プロジェクトの原点は、千葉県柏市立名戸ケ谷小学校の校長室にあります。

 津久井智洋校長は、教室で過ごすことに難しさを感じている子どもたちを校長室へ招き、その一角を小さな理科実験室として活用してきました。そこで使われていたのが、津久井校長が長年愛してきたNゲージです。

 コントローラーを操作すると電気が流れ、列車が動く。接続が不十分なら列車は止まる。動かなければ原因を探し、修理してもう一度走らせる。Nゲージを入り口に、子どもたちは電気や動力の仕組みを学び、自分から疑問を持ち、失敗しても再び挑戦するようになりました。

 なかよし学園はこの実践に、戦争によって未来を考える余裕を奪われた子どもたちが、再び未来を想像するための可能性を見いだしました。津久井校長は授業を監修し、自らNゲージ寄贈第1号者となりました。

 校長室から始まった二本のレールは、日本全国から寄せられた車両や線路とつながり、海を越えてウクライナへ到達しました。

校長室で児童たちに模型を使った理科教室を開く津久井校長

■MINILAND.UAとつないだ、日本の「命を救った鉄道」

 9月2日、中村雄一代表と中村里英事務局長は、キーウのMINILAND.UAを訪問しました。同館は、鉄道模型とジオラマでウクライナの都市、産業、歴史、人々の暮らしを表現する施設です。

 戦争下でも運営を続け、子どもたちのほか、戦争によって心身に傷を負った市民、負傷した軍人、退役軍人(ベテラン)らが、模型制作やワークショップを通じて他者とつながり、心を整えるための環境づくりにも取り組んでいます。

鉄道博物館MINILAND.UA
鉄道博物館MINILAND.UA
鉄道博物館MINILAND.UA

 なかよし学園は同館へ日本から託されたNゲージを寄贈し、今後の教育活動で活用することを協議しました。さらに日本とウクライナをビデオ通話でつなぎ、津久井校長が一台の赤いディーゼル機関車に込められた実話を伝えました。

ウクライナとビデオ通話を行った津久井校長

■東日本大震災で命をつないだ「デーデ」の秘話

 津久井校長が紹介したのは、絵本『はしれ ディーゼルきかんしゃデーデ』(文・すとうあさえ/絵・鈴木まもる/童心社)に描かれた、東日本大震災直後の緊急燃料輸送です。

 ビデオ通話では絵本を画面に映し、ウクライナ側では、日本から届いたDD51形のNゲージ模型を手に取りながら物語に耳を傾けました。

デーデの物語を説明する津久井校長
デーデの物語を説明する津久井校長

 2011年3月11日の東日本大震災では、地震と津波によって東北本線などの交通網が寸断され、製油所の操業停止も重なって、東北地方でガソリンや灯油などが深刻に不足しました。雪の残る避難所の暖房、救援車両、病院や公共施設の発電にも燃料が必要でした。

震災2ヶ月後に現地で活動を行なったなかよし学園
震災2ヶ月後に現地で活動を行なったなかよし学園
震災2ヶ月後に現地で活動を行なったなかよし学園
震災2ヶ月後に現地で活動を行なったなかよし学園

 通常の太平洋側ルートが使えない中、関係者は横浜・根岸から日本海側へ迂回し、新潟を経由して福島県郡山市へ燃料を届けるルートを構築しました。電化されていない磐越西線を走るため、全国からDD51形ディーゼル機関車が集められ、急勾配を越えるため二台で貨車を牽引する「重連運転」が行われました。

 10両のタンク貨車を牽引した最初の列車は、雪の残る急勾配で車輪を空転させ、一時立ち往生します。それでも救援の機関車が駆けつけ、予定より約3時間遅れて郡山へ到着しました。

 この列車を実現したのは、一台の機関車だけではありません。全国から機関車を集めた人、線路の安全を確認した人、運行計画をつくった人、車両を整備した人、雪の中で運転した人、救援へ向かった人、そして到着を信じて待った被災地の人々。一人ひとりの「今、自分にできること」が、命を支える燃料輸送を実現しました。

 国土交通省の記録では、東北本線が復旧するまでに横浜・郡山ルートで累計19,892キロリットル、盛岡方面と合わせて56,741キロリットルの燃料が運ばれました。20キロリットル積みのタンクローリー約2,850台分に相当します。

 鉄道は、ただ人を運ぶ移動手段ではありません。食料や燃料を運び、離れた地域を結び、時には人々の命を救う社会基盤です。

 道が断たれても、人と人とのつながりまで断つことはできない。一つのルートが使えなくても、知恵と技術を持ち寄れば、別の道をつくることができる。

 「デーデ」の物語は、戦争によるインフラ破壊を経験するウクライナの人々に感動と、再建へ向かう勇気を届けました。DD51形の模型は、日本の災害と復興、人々の連帯を伝える「物語を運ぶ車両」へと変わりました。

改めてディーゼル機関車デーデを見つめるパブロC E.O.

■ウクライナから贈られた、戦時下を走る列車

 日本からDD51形とその物語を受け取ったMINILAND.UAからは、なかよし学園へウクライナ鉄道の旅客車両模型が贈られました。

 それは、その後9月5日に中村代表と中村事務局長が、キーウからリビウへ移動する際に実際に乗車した旅客列車を再現した模型でした。

ウクライナ鉄道をプレゼントされた中村雄一代表
ウクライナ鉄道で移動するなかよし学園中村雄一代表、中村里英事務局長

 キーウでの活動を終えた二人は、日本から託された教材とともにリビウへ向かいました。車内には、家族のもとへ帰る人、仕事や生活のために移動する人、戦争下でも日常を守ろうとする人々が乗っていました。

 この列車は人だけでなく、「なかよし鉄道」の平和教材を次の活動地へ運びました。リビウでは9月7日と8日、「ブドーカン」の子どもたちがNゲージ、レゴ、手回し発電機、防災カルタを使い、空襲や停電が続く社会で暮らしたい未来のまちを設計しました。

 キーウとリビウという二つの実装都市を結んだウクライナ鉄道は、本プロジェクトそのものを運んだ列車でもあります。

武道館学校の生徒たちも未来のまちづくりを学んだ

■乗車から8日後、同じウクライナ鉄道の旅客列車が攻撃を受ける

 二人の乗車から8日後の9月13日、同じウクライナ鉄道が運行するキーウ発ワルシャワ行き旅客列車が、ポーランド国境に近いヤホディン駅付近でロシア軍の攻撃を受けたと報じられました。

 報道によれば、ドローン攻撃によって機関車が被弾し、列車の一部で火災が発生しました。死傷者は報告されませんでしたが、攻撃直前には欧州各国の要人らが乗った列車も付近を通過していました。

 なかよし学園が乗車した列車と、攻撃を受けた列車は、同一の運行区間や編成ではありません。しかし、どちらも戦争下のウクライナで、人々の命と日常を支える鉄道です。

 民間航空機の運航が事実上停止しているウクライナで、鉄道は国内移動、国外避難、家族との再会、支援物資の輸送を支える生命線です。その鉄道が攻撃対象となった事実は、「列車で次のまちへ行く」という日常さえ戦争に脅かされていることを突きつけました。

攻撃を伝えるBBCニュース

https://www.bbc.com/japanese/articles/c93vnk0lv19o

■列車は、人々の「生きた証」を載せて走る

 日本から贈られたDD51形には、被災地へ燃料を届けるために力を尽くした人々と、列車を待った人々の記憶があります。

 ウクライナから贈られた旅客車両には、攻撃の危険の中で列車を走らせる鉄道関係者、避難する子ども、家族との再会を願う人、日常を守るために移動する人々の記憶があります。

 一方は、自然災害で寸断された地域へ命を支える燃料を運んだ列車。もう一方は、戦争によって日常が脅かされる中でも、人々の生活を支え続ける列車です。模型として見れば、どちらも手のひらに載る小さな車両です。しかし、その背景には数え切れない人生があります。

なかよし学園が乗った寝台列車。現在のウクライナでは列車は重要な交通手段になっている。

 誰が乗ったのか。何を運んだのか。誰が動かしたのか。誰が出発を見送り、誰が到着を待っていたのか。その列車によって、どのような命と生活がつながったのか。

 列車は、ただの車両ではありません。そこには、乗った人の人生、見送った人の思い、到着を待つ人の願い、列車を走らせ続ける人々の覚悟があります。

 一つひとつの列車は、その時代と土地を生きた人々の「生きた証」を載せて走っています。

 日本からウクライナへは、災害から立ち上がった経験が渡りました。ウクライナから日本へは、戦争下でも日常と希望を守り続ける人々の姿が返ってきました。

 支援する側と支援される側を固定せず、互いの経験、知恵、文化、希望を循環させる。この車両交換は、なかよし学園が実践する「CoRe Loop」を象徴しています。

■二つの車両を、次世代へ語り継ぐ

 DD51形の模型は今後、MINILAND.UAの子ども、学生、退役軍人らを対象としたワークショップで、東日本大震災時に鉄道が人々の命をつないだ実話とともに紹介されます。

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