【論文発表】系図系譜学における「史料」「史実」「補助学」等6つの語彙と表現の使用禁止
2026年10月2日、系図系譜学研究所所長木下 祐也による論文「系図系譜学の理論体系構築のための試論(10)――用語論(5)――」が家系研究協議会発行の学術雑誌『系図系譜学論究』1巻10号(2026年)に掲載された。本論文は、歴史学・史料学・伝統的系譜学において慣用されてきた6つの語彙・表現について、系図系譜学における使用を禁止すべき理由を体系的に論証したものである。本論文はJ-stageおよび家系研究協議会公式サイト(kakenkyou.org)にて公開されている。
系図系譜学研究所がValuePressで配信したプレスリリースの原文を、Zero Press が転載して掲載しています。

【論文の概要】
系図系譜学は、歴史学とは本来的に別個の独立した学問分野であるところ、本論文は、その用語体系の精緻化を目的とする用語論の第5弾(シリーズ全体では第10弾)に当たる。
本論文では、伝統的系譜学・歴史学論文に頻出する下記6つの語彙・表現を取り上げ、それぞれについて事実関係の確認・問題点の分析・検討・結論という構成で系図系譜学においても使用すべきかを論じた。
(1)「史料」及び「傍証」
「史料」は、歴史学者による定義において「歴史学における証拠」または「歴史学研究の材料・素材」とされており、歴史学専用概念であることから、歴史学とは別個の学問分野である系図系譜学がこれを使用するのは矛盾する。さらに、法学の証拠論と比較すると、「史料」・「傍証」は、要証事実・立証趣旨・直接証拠と間接事実・間接証拠、補助事実・補助証拠の区別など推認構造に関する重要概念を欠き、致命的に未発達である上、使用する必要性もないことから、引用または出典を記載する場合を除き、「史料」「傍証」の語の使用を禁止するものとした。
(2)「史実」
歴史学者による「史実」の定義は存在せず、「歴史上の事実」「歴史的事実」の略語であると解されるが、「歴史」自体も歴史学において適切に定義されていない。使用実態から、最近の出来事には用いられず時間的限定性・恣意性があり、学際的通用力を欠き、確定的事実であるかのような権威的先入観を生じさせ、論者の確信度を適切に表示する慣行も存在せず、使用する必要性もないことから、引用または出典を記載する場合を除き、「史実」の語の使用を禁止するものとした。
(3)「補助学」
「補助学」概念は歴史学の概説書においてのみ用いられるローカル概念であり、国語辞典・他の学問分野には対応する概念が存在しないことから学際的通用力を欠き、一方の学問分野による他の学問分野の位置づけは拘束力を持たない上、使用する必要性も認められず、補助学概念が誤解・弊害を生じさせてきた実例(古文書学・伝統的系譜学)も確認したことから、伝統的系譜学に関する学史の叙述をすること及び「補助学」の語の不使用を推奨することを目的とする場合、及び引用または出典を記載する場合を除き、「補助学」の語の使用を禁止するものとした。
(4)「嫡流」「嫡男」の同義語としての「正統」
「正統性」と混同する可能性があり、対義語が「異端」である以上、「嫡流」「嫡男」でない者を「異端」と位置づけることになるという不当な帰結を招く。誤解の余地のない代替語(「嫡流」「嫡男」)が存在するにもかかわらず、文脈依存での解釈を強いる点で精緻化原則・審査可能性原則に違反することから、引用または出典を記載する場合を除き、「嫡流」「嫡男」の同義語としての「正統」の使用を禁止するものとした。
(5)文書上の記載の有無を表す語としての「見える」「見えない」
国語辞典への掲載が極少数にとどまり一般的語義とは認められず、他の学問分野では使用されないことから、学際的通用力を欠き、また、視認の語義が当然に含まれることから主観的認識と客観的事実の識別が困難であり、一義明確性を欠く。「当該文書上に記載がある」等の客観的な代替表現が存在することから、引用または出典を記載する場合を除き、文書上の記載の有無を表す語としての「見える」「見えない」の使用を禁止するものとした。
(6)文書上の記載を意味する「伝える」
系図譜・古文書を主語として「伝える」とするのは擬人化表現であり学術論文として不適切であるほか、作成者が後世への伝達目的を有していたかのような余分な主観的要素を含む。他の学問分野での使用例はなく学際的通用力を欠くことから、引用または出典を記載する場合を除き、文書上の記載を意味する「伝える」の使用を禁止するものとした。
【著者について】
木下 祐也:慶應義塾大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修了、法務博士(専門職)、系図系譜学研究所所長、家系研究協議会執行理事。歴史学とは異なる学問分野としての系図系譜学の理論体系の構築を進めている。論文一覧はresearchmapに掲載している。
【掲載誌について】
家系研究協議会発行『系図系譜学論究』は、系図系譜学の専門学術誌である。
【論文アクセス先】
J-stage:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/keiron/-char/ja
家系研究協議会-『系図系譜学論究』:https://www.kakenkyou.org/ejournal/
【系図系譜学研究所について】
本社:〒104-0061 東京都中央区銀座1-12-4 N&E BLD.6F
代表者:所長 木下祐也
URL:https://www.genealogy.jp/ja/
メール:inf@genealogy.jp
事業内容:
1.実務系:先祖調査・家系図作成・人物事典編纂サービス
2.学術系:系図系譜学の理論体系の構築
系図系譜学研究所は、ご家族・ご先祖様の生きた証を残す先祖調査・家系図作成・人物事典編纂サービスに加えて、これまで系図系譜研究では理論体系の構築がなされてこなかったため、系図系譜学として理論体系を構築しています。系図・系譜に関する実務と学術の双方を扱う専門機関です。
Zero Press のデータで見るこのリリース
- 配信元
- 系図系譜学研究所
- 配信サイト
- ValuePress
- カテゴリ
- 技術・開発
- 直近 7 日の配信
- 技術・開発 379 本 / 全体 10,968 本
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