PRESS RELEASE 経営・業績

NTTとOptQC、光量子コンピュータの実用化に向け新たに資本業務提携契約を締結

NTTとOptQC、光量子コンピュータの実用化に向け新たに資本業務提携契約を締結 NTT株式会社のプレスリリース

出典: NTT株式会社

 NTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)とOptQC株式会社(本社:東京都豊島区、代表取締役CEO:高瀬 寛、以下「OptQC」)は、誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実用化に向けて、資本業務提携契約を締結しました。本提携により、NTTはOptQCへ出資を行う予定であり、研究開発のみならず、事業化、ユーザ企業を交えたユースケース開拓、サプライチェーン構築および社会実装までを見据えた中長期的な連携体制を強化します。これにより、人材や研究開発環境の拡充を図り、誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現に向けたシステム設計や要素技術の開発を加速させます。

 両社は、光量子コンピュータを次世代の計算基盤として社会実装することで、金融、製造、創薬、新材料開発、エネルギー最適化、AI高度化などの社会課題の解決に貢献することを目指します。   

NTTとOptQCとの連携

1.背景

 近年、金融分野におけるリスク分析、製造分野における生産・物流の高度化、創薬、新材料開発、エネルギー利用の最適化など、従来のコンピュータでは膨大な時間を要する複雑な課題への対応手段として、量子コンピュータへの期待が世界的に高まっています。

 特に光量子コンピュータは、光通信技術との親和性が高く、将来的な大規模化や省電力化が期待できることから、次世代の計算基盤として注目されています。

 NTTとOptQCは2025年11月に、スケーラブルで信頼性の高い実用的な光量子コンピュータの実現に向けた連携協定を締結し、100万量子ビット級の光量子コンピュータ実現に向けた検討を進めてきました。本連携協定の締結後、NTTは厚木研究開発センタに光量子コンピュータ研究開発拠点を立ち上げました。また、OptQCは、産業技術総合研究所の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)において、光量子コンピュータ1号機「MoQuren(モクレン)」の稼働を開始しています。さらに、NTTとOptQCが参画している研究チームは、光量子コンピュータの性能向上に不可欠な世界最高品質の量子光源の実現に成功しました。本成果は、信頼性の高い実用的な光量子コンピュータの実現に向けた重要な基盤技術の一つです。

 一方で、社会課題の解決に貢献可能な量子コンピュータを実用化するためには、以下の技術課題を解決する必要があります。

  • 誤り耐性の実現 (FTQC: Fault-Tolerant Quantum Computing)

  • 100万量子ビット級への大規模化

  • 実用的なソフトウェア基盤の構築

  • 社会実装に向けたシステム化

2.取り組み概要

 NTTとOptQCは、新たに資本業務提携契約を締結するとともに、これまでの連携協定に基づく共同検討をさらに発展させた共同研究を開始し、光量子コンピュータの研究開発から事業化、社会実装までを一体的に推進する取り組みを加速します。

  1.  資本業務提携契約の締結

     NTTは、OptQCと資本業務提携契約を締結しました。今後、NTTはOptQCへの出資を予定しており、本提携を通じて、両社は、研究開発に加え、事業化、ユーザ企業を交えたユースケース開拓、サプライチェーン構築および社会実装までを見据えた連携体制を強化します。

     NTTが有する光通信技術、ネットワーク、データセンタ、量子情報処理技術およびIOWN分野の知見と、OptQCが有する光量子コンピューティング技術を融合することで、光量子コンピュータの実用化および産業化の加速を目指します。

     また、両社は、国内外のユーザ企業、研究機関等との連携を推進し、光量子コンピュータを活用したユースケースの創出、将来の市場形成、社会実装に向けた取り組みを進めます。

     今回の出資は、光量子コンピュータの研究成果を社会実装へとつなげるための戦略的投資として位置付けるものであり、両社の中長期的な連携関係をさらに強固なものとします。

  2. 共同研究契約の締結

     両社は、第一弾として、2027年度までの共同研究契約を締結し、誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現に向けた研究開発を開始しました。本共同研究では、システムの実現に必要となるアーキテクチャおよび主要要素技術の設計完了を目標とします。

     具体的には以下の研究テーマに取り組みます。

     ・波長多重技術を活用した量子ビット数の拡大

     ・誤り耐性を備えた光量子コンピュータの設計

     ・100万量子ビット級システムアーキテクチャの設計

 共同研究終了後は、設計成果をもとに実機実装フェーズに向けた新たな共同研究を進める予定です。

3.今後の展開

 NTTとOptQCは、研究開発と社会実装に向けた取り組みを推進し、2030年度までに誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現を目指します。

 ビジネスロードマップとしては、2026年度から、光量子コンピュータのユースケース創出に賛同いただけるユーザ企業や研究機関との共創を開始します。2027年度には、将来の実用化を見据えたサプライチェーン構築に着手し、2028年度には、1万量子ビット級光量子コンピュータの実機を用いたユーザとのPoCを開始します。さらに、2029年度には、アプリケーション開発や実証を拡大し、社会実装に向けた取り組みを進めます。

 技術ロードマップとしては、2027年度までに、誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現に必要となるシステムアーキテクチャおよび主要要素技術の設計完了を目指します。並行して、2027年度までに、実用的な1万量子ビット級光量子コンピュータを実現し、2028年度に実機検証を開始します。2029年度には、光量子コンピュータと古典コンピュータを統合的に活用するためのソフトウェア基盤を開発するとともに、実アプリケーションを用いた検証を進めます。このように、誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現に向けた研究開発を段階的に進めてまいります。
 これらの取り組みを通じて、2030年度までに、誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現を目指すとともに、金融分野におけるリスク分析や最適化計算、製造分野における生産・物流の高度化、創薬、新材料開発、エネルギー利用の最適化など、幅広い分野における代表的なユースケースの社会実装を推進してまいります。

ロードマップ

4.代表コメント
NTT株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 島田 明

 量子コンピュータは、金融、製造、創薬、新材料開発、エネルギー利用の最適化など、さまざまな社会課題の解決に貢献し得る次世代の計算基盤です。NTTは、これまで培ってきた光通信技術、ネットワーク、データセンタ、IOWNの知見を基盤に、OptQCとの資本業務提携および共同研究を通じて、光量子コンピュータの研究開発から事業化、さらには社会実装までを一体的に推進してまいります。本取り組みにより、日本発の光量子コンピュータ技術を世界に展開し、新たな価値の創出に貢献いたします。

OptQC株式会社 代表取締役 CEO 高瀬 寛

 昨年11月の連携協定の締結以来、技術面の検討にとどまらず、事業化やユースケース開拓、社会実装のあり方について、両社の研究・開発・ビジネス部門が議論を重ねてまいりました。この度、両社の連携を更に強固にすべく資本業務提携契約の締結と共同研究の開始に至れたことを大変嬉しく思います。東京大学における25年にわたる研究を基盤に当社が築いてきた光量子コンピューティング技術と、NTTが光通信分野で培ってきた光増幅、光多重化技術などの知見を融合することで、誤り耐性を備えた100万量子ビット級の光量子コンピュータの実現を大きく前進させられると確信しています。2030年度の実現目標に向けてNTTと着実に歩みを進め、社会課題の解決に資する光量子コンピュータの早期実現に取り組んでまいります。

5.関連する過去の報道発表

・2024年11月8日「新方式の量子コンピュータを実現-世界に先駆けて汎用型光量子計算プラットフォームが始動-」(https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/11/08/241108a.html

・2025年11月18日「NTTとOptQC、スケーラブルで信頼性の高い実用的な光量子コンピュータの実現に向けた連携協定を締結~光技術が切り拓く量子の未来-100万量子ビットの光量子コンピュータ実現に向けて~」(https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/11/18/251118a.html

・2026年3月5日「導波路型光デバイスによる世界最高品質のスクイーズド光生成に成功~信頼性の高い実用的な光量子コンピュータの実現に大きく前進~」(https://group.ntt/jp/newsrelease/2026/03/05/260305a.html

・2026年7月21日「光量子コンピュータ1号機「MoQuren」の稼働を開始しました~【世界初】商用化を目指す国産光量子コンピュータが稼働。開発者向け実行環境の整備を加速~」(https://www.optqc.com/news/news/moquren-launch

【用語解説】

※1.量子コンピュータ

量子力学の原理を利用した、現在の(古典)コンピュータとは異なる方式で動くコンピュータ。特定の問題を高速で解けることが知られている。例えば、量子系の効率的なシミュレーションや素因数分解などの問題が高速に解けると期待されている。

※2.光量子コンピュータ

従来の古典コンピュータでは、電気信号によって表される情報が半導体プロセッサによって処理される。光方式では、光が情報の担い手となる。光の光子数、偏光、振幅などさまざまな光の物理量を用いる方式がある。

※3.量子ビット

量子コンピュータにおいて情報を表す基本単位。実際の装置上で実現される「物理量子ビット」と、複数の物理量子ビットを組み合わせて訂正を行い、安定した計算を可能にする量子ビットの単位である「論理量子ビット」が存在。実用的な量子計算には、物理量子ビットではなく論理量子ビットが重要な指標となる。なお、本リリースにおける量子ビット数は物理量子ビット数を示している。

※4.FTQC(Fault-Tolerant Quantum Computing)

誤り訂正により、計算中に生じる誤りを検出・訂正し、信頼性の高い量子計算を可能にする技術。量子コンピュータは非常に繊細で、わずかなノイズでも計算結果が乱れる可能性があるため、実用化に向けては誤り耐性の実現が重要となる。

※5.光増幅技術/量子光源

光信号を強める技術。通信分野では、遠距離伝送で弱くなった光を増幅して情報を正確に届けるために使われる。量子コンピュータでは、この技術を応用し、量子状態を担う光を安定的に供給することで、大規模な計算に必要な量子光源を実現する。

※6.波長多重

光通信技術において、複数の光信号を一つの伝送路で同時に送信する技術の一つで、異なる波長の光に異なるデータを割り当てる技術を示す。なお、時間を分割して異なる時間に異なるデータを割り当てる時間多重は既に光量子コンピュータへの応用が進んでいる。

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