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マッチングアプリで会った相手から突然「示談金を払え」――美人局・脅迫の可能性があるとき、支払う前に確認したいこと

マッチングアプリで会った相手から突然「示談金を払え」――美人局・脅迫の可能性があるとき、支払う前に確認したいこと

出典: 弁護士法人若井綜合法律事務所

弁護士法人若井綜合法律事務所が@Pressで配信したプレスリリースの原文を、Zero Press が転載して掲載しています。

  • #ビジネス

マッチングアプリやSNSで知り合った相手と会った後、突然「夫(彼氏)がいる」「不倫したことを家族や会社にばらす」「警察に被害届を出す」などと言われ、高額な金銭を要求されるケースがあります。なかには、相手から「示談金」「慰謝料」「解決金」などの名目を示され、「今すぐ払わなければ大変なことになる」と迫られるケースもあります。

こうした状況では、恐怖や焦りから、相手が提示した金額をそのまま支払ったり、その場で示談書や念書に署名したりしてしまうことがあります。しかし、「示談金」と書かれているからといって、その金額を一方的に支払わなければならないとは限りません。

重要なのは、**「何についての請求なのか」「本当に支払う義務があるのか」「金銭の要求方法に問題がないか」**を切り分けて確認することです。

本記事では、マッチングアプリなどをきっかけに知り合った相手から「示談金を払え」と要求された場合に、支払う前に確認しておきたいポイントや、示談書への署名、すでに支払ってしまった場合の対応について、法律上の観点から整理します。

示談は、法律上は和解という契約にあたります。争いのある当事者が互いに譲り合い、合意によって決着をつけるものです。契約である以上、当事者双方が納得して合意しなければ成立しません。

つまり示談金とは、話し合いの結果として決まる金額の呼び名であって、請求する側が一方的に確定できる数字ではありません。相手が「これが示談金の相場だ」と言い、その場で紙を差し出してきたとしても、それは提案であって決定ではないという点をまず押さえてください。

そのうえで、切り分けるべき問いは二つあります。ひとつは、その請求に根拠があるのかという中身の問題。もうひとつは、求め方が許される範囲を超えていないかという方法の問題です。この二つは別々に評価されるため、混ぜて考えないほうが判断を誤りません。

示談金と一口に言っても、請求の名目はいくつかに分かれます。代表的なのは次の四つです。

配偶者や交際相手と関係を持ったことに対する慰謝料

相手が18歳未満だったことを理由とする口止め料や解決金

妊娠、中絶費用、通院費、休業補償といった名目

現場での暴行や物の破損に対する賠償

名目が違えば、請求が成り立つかどうかの判断もまったく変わります。「いくら払えばいいのか」を考える前に、「何に対する請求なのか」を相手に確認することが出発点になります。名目をはっきりさせないまま金額だけを値切る交渉に入ると、根拠のない請求に応じる形で決着してしまいます。

最も典型的なのがこの類型です。この場合、慰謝料を請求するという理屈自体は形の上では成り立ちます。ただし、実際に請求が認められるかは別の話です。

まず、不貞を理由とする慰謝料は、法律上の婚姻関係、あるいはそれに準じる内縁関係が保護の対象となる枠組みです。相手が「彼氏だ」と名乗るだけで、婚姻や内縁に至っていない交際段階であれば、この枠組みは原則として及びません。婚約が成立していたなど、事情によって評価が変わる余地はあるものの、交際しているというだけでは慰謝料の根拠として弱いのが実情です。

次に、「夫だ」と名乗る人物が現れた場合も、婚姻関係が実在するかどうかは戸籍で確認できる事柄です。名乗りだけを根拠に支払いに応じる必要はありません。

さらに、仮に本当の夫婦であったとしても、最初から二人で示し合わせて関係を持たせ、そこから金銭を得ようとしていた場合には、法律上保護すべき平穏な婚姻関係が損なわれたとは評価しにくくなります。この場合、慰謝料請求が認められる見込みは低いと考えられます。

加えて、相手が既婚者であることを知らず、知らなかったことに落ち度もなかったといえる場合には、責任そのものが否定される余地があります。マッチングアプリで独身として登録されていたという事情は、この点に関わってきます。

行為の後に年齢を告げられ、警察に届け出ると言われて金銭を求められる類型です。ここで気をつけたいのは、支払いに応じるかどうかという問題と、自分自身の刑事責任の問題が、切り離して考えるべき別の事柄だという点です。

年齢が偽られていた場合、つまり実際には18歳以上なのに18歳未満だと装って金銭を求めていたのであれば、それは事実を偽って財産を交付させる行為にあたります。

一方、本当に18歳未満だった場合には、金銭を支払っても自分の側の刑事上の問題が消えるわけではありません。また、警察に被害を申告することが、結果として自分の行為を申告することにもなりかねません。この点は判断が分かれるところなので、相手が18歳以上だと確信を持てない状況であれば、警察に行く前に弁護士に相談したほうが安全です。弁護士であれば、相手の年齢や婚姻の有無を制度に沿って調べる手段を持っています。

慰謝料や賠償の金額は、事案の内容や関係の期間、生じた損害といった事実関係を踏まえ、裁判例の積み重ねを参考にして評価されるものです。相場と呼ばれるものにも幅があり、その場の口頭で確定する性質のものではありません。

近年は、生成AIに示談金の相場を答えさせ、その数字を根拠として提示する手口が報じられています。数字が具体的であることと、その数字に根拠があることは別です。「その金額はどのように算出したのか」と尋ねるだけで、説明が続かなくなることは珍しくありません。

金銭の要求とあわせて、あらかじめ用意された示談書や念書への署名を求められることがあります。ここは特に慎重に扱うべき場面です。

署名や押印がある書面は、その内容を確認したうえで自分の意思で署名したものとして扱われるのが原則です。後から「脅されて書いた」「内容を読む余裕がなかった」と主張して取消しや無効を争う余地はあり、強迫による取消しや、内容が著しく不当な場合の公序良俗違反といった構成が考えられます。ただし、いずれも当時の状況を裏づける材料が必要になり、争えば必ず覆るというものではありません。

もうひとつ知っておきたいのが、取り消すことができる行為であっても、その債務の一部でも履行すると、後から追認したものとして扱われる場合があるという点です。「とりあえず一部だけ払っておく」という対応が、書面の効力を固める方向に働くおそれがあります。

また、その場で作られる書面には、これで一切の請求を終わらせるという清算の定めが入っていないことがよくあります。清算の定めがなければ、支払った後に別の名目で再び請求される余地が残ります。金額の多寡だけでなく、書面が何を終わらせるものなのかを確認する必要があります。

金銭を求めること自体は、正当な権利に基づくものであれば違法ではありません。境界は、その権利の範囲内にとどまっているか、求め方が社会通念上許される程度を超えていないかで判断されます。判例は、権利を持つ者であっても、範囲や方法がその程度を逸脱すれば違法となり、その場合には交付を受けた金額の全額が問題になり得るという考え方を示しています。

具体的には、怖がらせて金銭を交付させれば恐喝、事実を偽って払わせれば詐欺、義務のないことを無理にさせれば強要が問題になります。抵抗できない状態で奪われた場合には、さらに重い罪が成立し得ます。金銭の受け渡しに至らなかった場合でも、未遂として扱われる罪があります。

なお、「訴える」「被害届を出す」という予告と、「家族や勤務先に知らせる」という予告とでは、評価のされ方が異なります。前者は本来の手続を告げるものである一方、後者は請求とは別の不利益を材料にするものだからです。

すでに金銭を渡してしまった方も、回復を求める余地は残っています。恐喝や詐欺によって支払わされた金銭は、そもそも支払う理由のないものですから、不法行為に基づく損害賠償や不当利得の返還という形で返還を求めることが考えられます。相手の所在や資力によって結果は変わるため、相手を特定できる情報を残しておくことが重要になります。

署名してしまった書面についても、その場の状況を示す記録が残っていれば、争える可能性は上がります。録音、メッセージのやり取り、その日の移動記録、現金を引き出した記録といったものは、時間が経つほど集めにくくなります。

名目を確かめないまま金額の交渉だけを始めてしまうこと。根拠のない請求に応じる形で決着してしまいます。

免許証や保険証の画像、勤務先、自宅住所といった情報を渡してしまうこと。手元に材料が残るほど、要求が繰り返される構造ができあがります。

やり取りを自分から削除してしまうこと。見たくない記録ほど、後から必要になります。

その場を離れた後は、警察相談専用電話の#9110を使って相談することもできます。緊急性がある場合は110番です。

知らせる行為自体が別の責任を生じさせるため、実際に実行されるとは限りません。ただし、断ることと放置することは別です。連絡が続く場合は、窓口を弁護士に切り替えることで直接のやり取りを止められます。

清算の定めのない書面で支払っても、別の名目で再び請求される余地が残ります。また相手にとっては、支払いに応じる相手だという評価が残ります。金額よりも、何が終わるのかを確認してください。

即答する義務はありません。手持ちがないこと、持ち帰って確認したいことを伝えて構いません。身の危険を感じる状況であれば、その場は無理に抵抗せず、離れてから動くという判断も現実的です。

示談は当事者双方の合意で成立する契約であり、示談金という呼び名は支払い義務を意味しない。

請求の中身と、求め方が線を越えていないかは、別々に評価される。

まず何に対する請求なのかを確かめる。名目によって成り立つかどうかは大きく変わる。

「夫だ」という名乗りや「18歳未満だ」という申告は、裏づけを確認できる事柄である。

その場での署名は原則として有効に扱われ、一部の支払いが効力を固める方向に働くことがある。

支払った後でも回復を求める余地はあるため、相手を特定できる材料とやり取りの記録は残しておく。

若井 亮(わかい りょう)

代表弁護士 弁護士法人若井綜合法律事務所(東京弁護士会所属)

男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の脅迫的な言動にも毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために尽力している。

弁護士法人若井綜合法律事務所

https://wakailaw.com/

当事務所は、恐喝・脅迫被害をはじめとする男女間のトラブルを数多く取り扱ってまいりました(男女トラブルのご相談は類型23,000件以上お受けしてまいりました)。「家族や勤務先に影響が及ばないように」という点に最大限配慮しながら、内密かつ穏便な解決を最優先に対応いたします。すでに個人情報を知られてしまっている場合や、要求がエスカレートしている場合も、状況に応じて被害の拡大を防ぐ手立てがあります。

全国どこからでもご利用いただける無料相談を、メール・電話・LINEで24時間受け付けております。まずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が、解決へとつながります。

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