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10年前の熊本地震からの学び 車中泊で注意したい「エコノミークラス症候群」

熊本地震の避難生活で危険な「エコノミークラス症候群」。足を動かす、水分補給、片足の腫れに注意することで予防できます。症状を知り、突然の息苦しさは緊急対応を。

出典: 医療法人社団博雅会草ヶ谷医院

2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、熊本県で最大震度7が観測されました。その後も強い地震が相次いでおり、自宅に戻れず、避難所や車の中で過ごしている方も少なくないと思います。

まずは倒壊するおそれのある建物や土砂災害の危険がある場所を避け、自治体、警察、消防などから発表される最新の情報に従って、安全を確保してください。

そのうえで避難生活が続くときに、ぜひ知っておいてほしい病気があります。

いわゆる「エコノミークラス症候群」です。

10年前の2016年に発生した熊本地震では、余震への不安などから車中泊を続ける方が多く、エコノミークラス症候群が大きな問題となりました。

今回も、同じ熊本で大きな地震が発生しています。予防できる可能性のある病気で命を落とす人を出さないために、症状と予防法をお伝えします。

「エコノミークラス症候群」という名前から、飛行機に乗ったときだけ起こる病気?飛行にに関連する病気?と誤解をまねくことがあります。しかし、実際には飛行機だけの病気ではありません。

飛行機や車の座席や避難所などで長時間同じ姿勢を続け、足を動かさないでいるときにおこる病気なのです。

長時間同じ姿勢で足を動かさずに、あるいは動かせずにいると、足の静脈を流れる血液の流れが滞ります。

そこに水分不足や暑さによる脱水などが加わると、血液が固まりやすくなり、足の深い部分にある静脈(深部静脈)に血の塊、すなわち血栓ができることがあります。これを「**深部静脈血栓症**」といいます。

この血栓が下肢の静脈内にとどまっているだけであれば、下肢の浮腫みや腫れといった局所の症状でおさまるのですが、その血栓の一部がはがれて血液の流れに乗り、体の中心部、すなわち肺の血管まで移動して詰まると、「**肺血栓塞栓症**」を起こします。

肺の血管が広い範囲で詰まると、突然の呼吸困難、胸痛、意識消失を起こし、ときに命に関わることがあります。

厚生労働省も過去の経験をふまえて、食事や水分を十分に取れない脱水状態で、車などの狭い座席に長時間座って足を動かさないと、血行不良によって血栓ができ、肺塞栓症を起こすおそれがあると注意を呼びかけています。

災害時には、エコノミークラス症候群を起こしやすい条件が重なります。車中泊や避難所では、寝ているときに車内で足を動かせない、あるいは窮屈なスペースで身動きがとりづらいといったことが起こりやすくなります。

とくに車の座席に座ったまま眠ると、足を十分に伸ばすことができないばかりか、足を動かすスペースすらありません。

ふくらはぎの筋肉には、歩いたり足首を動かしたりすることで、ポンプのように足の静脈を物理的に圧迫し、内部の血液を心臓へ押し戻す働きがあります。こういった動きができないと、血液が心臓に戻りづらくなり、足に血液が滞りやすくなります。

くわえて水分を控えてしまうことが血液の粘性を高めて、血液の塊である血栓を作りやすい状況にちかづいてしまうわけです。

避難生活では「トイレに行きたくない」「周囲に迷惑をかけたくない」「飲み水を節約したい」

と考えて、水分を控えてしまうことがあります。しかもこの暑さで、大汗をかいて体は脱水気味、血液は濃縮されていきます。この結果水分不足による脱水がおこり、血栓ができやすくなるわけです。

けがや疲労で動けないこともあるでしょう。または地震による体調不良、疲労、睡眠不足、持病の悪化などによって、普段より活動量が低下することもあります。

特に足をけがした方や、歩くことが難しい方は注意が必要です。

足の静脈に血栓ができると、次のような症状が現れることがあります。

**・片方の足だけが急に腫れる**

**・ふくらはぎが痛む**

**・左右の足の太さが明らかに違う**

**・片方の足が赤くなる**

**・熱を持つ** などなど。

もちろんたまたま両方の足の静脈に血栓ができてしまい、両足に症状がでることもないわけではありません。

ただし全く同時に同程度の血栓ができることは少ないため、両足の左右差という形であらわれやすいわけです。

そこで、片足だけに現れる急な腫れや痛みは、深部静脈血栓症を疑う重要なサインということになるわけです。

避難所の医療スタッフ、保健師、救護所または医療機関に早めに相談してください。

すでに片足が強く腫れて痛んでいる場合は、自己判断でふくらはぎを強くもむことは避けてください。もしかしたらできてしまっている血栓をもみほぐして、剥がれさせてしまうかもしれないからです。

とくに突然の息苦しさや胸痛は緊急事態です。足にできた血栓が肺へ移動すると、次のような症状が現れることがあります。

突然、息が苦しくなった、胸が痛い、息を吸うと胸が痛む、血の混じった痰が出たなど、

このような症状がある場合は、「地震の疲れだろう」「不安や緊張のためだろう」と決めつけないでください。突然の強い息苦しさ、胸痛、意識消失がある場合は、速やかに医療機関にご相談ください。

**1.できる範囲で歩く**

安全を確認したうえで、可能であれば定期的に立ち上がって歩きましょう。

静脈血栓症を予防するうえで、最も基本的で重要なのは、足を動かすことです。

ただし、倒壊するおそれのある建物、崖、川、海岸、壊れた道路など、危険な場所を無理に歩いてはいけません。暑さ対策も非常に重要です。まずは安全の確保が最優先です。

**2.座ったまま足首を動かす**

外を歩けない場合でも、座ったままで運動できます。つま先を上げる、かかとを上げる、

足首を上下に動かす、足首をゆっくり回すなどなど。特に、かかとの上げ下ろしや足首の曲げ伸ばしは、ふくらはぎの筋肉を動かすために有効です。

軽い体操やストレッチ、かかとの上げ下ろし運動などを勧めています。

周囲の方にも声をかけ、少なくとも1時間に一度を目安に足を動かしましょう。

**3.水分を我慢しない**

喉が渇いてから一度に大量に飲むのではなく、少量ずつ、こまめに水分を取りましょう。

トイレを心配して水分を極端に控えることは危険です。ただし、心不全や腎不全などで医師から水分制限を指示されている方は、自己判断で急に飲水量を増やさず、医療スタッフに相談してください。

**4.アルコールを控える**

アルコールを水分補給の代わりにすることはできません。アルコールには尿を増やす作用があり、脱水を悪化させる可能性があります。避難生活中の飲酒はできるだけ控えてください。

**5.きつい服装を避ける**

ベルトやきつい衣服で下半身を強く締め付けないようにしましょう。可能な範囲で、ゆったりとした服装を心がけてください。

**6.足を下げたまま眠り続けない**

車中泊を避けられない場合でも、長時間、座席に座って足を下げた姿勢のまま眠り続けることは避けましょう。可能であれば、定期的に車外へ出て、安全な場所で歩いたり、足を伸ばしたりしてください。

避難所で簡易ベッドを利用できる場合は、その使用も検討してください。過去の災害時に日本循環器学会なども、長時間車の座席に座った姿勢で眠らないこと、足首を動かすこと、水分を補給することなどを呼びかけています。

**特に注意が必要な方**

エコノミークラス症候群は誰にでも起こり得ますが、次のような方は特に注意が必要です。

• **過去に深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を起こした**

• **がんの治療中である**

• **最近、大きな手術を受けた**

• **足をけがしている**

• **長時間歩くことが難しい**

• **高齢である**

• **肥満がある**

• **妊娠中または出産後である**

• **女性ホルモンを含む薬を使用している**

• **心臓や呼吸器などの持病がある**

エコノミークラス症候群の予防で、まず覚えてほしいのは次の3つです。

**足を動かす**

**水分を我慢しない**

**片足の腫れや突然の息苦しさを放置しない**

今回も余震が続き、自宅に戻ることができない方が多くいらっしゃると思います。

地震から命を守ったあとに、避難生活で予防できる病気によって命を落とす方を出してはいけません。この情報を車中泊をしているご家族や知人、周囲の方にも伝えてください。

お問合せ先:

内科 呼吸器内科 アレルギー科 草ヶ谷医院

院長 草ヶ谷英樹

TEL:054-366-2561

住所:〒424-0047

静岡県静岡市清水区鶴舞町6-1

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