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その風、目には逆風。ハンディファンで起こる「直風ドライ」

ハンディファンを目に当て続けると、涙の膜が失われて角膜上皮がはがれる「角膜びらん」を起こす危険があります。わずか5分で涙が減少するという研究結果もあるため、風は首元に向け、目への直接的な風当たりを避け...

出典: 医療法人社団久視会いわみ眼科

医療法人社団久視会いわみ眼科が@Pressで配信したプレスリリースの原文を、Zero Press が転載して掲載しています。

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今週末の学会で発表するポスターを受け取りに、三宮へ行ってきました。

外に出ると、やはり暑い。

街を歩いていると、ハンディファンを顔の近くに持ち、ずっと風を送り続けている人を何人も見かけました。

これだけ暑い時期ですから、使いたくなる気持ちはよく分かります。ハンディファンそのものを否定するつもりもありません。

ただ、眼科医としては、少し心配になります。

**ハンディファンを目に当てすぎると、「眼の皮がむける」ことがあるからです**。

黒目の表面にある透明な組織を、角膜といいます。

角膜のいちばん外側は、角膜上皮という薄い細胞の層に覆われています。皮膚とは異なりますが、外部の刺激から目を守る「皮」のような役割をしています。

この角膜上皮の一部がはがれた状態が、 **角膜びらん** です。

分かりやすくいえば、

**「眼の表面の皮がむけた状態」**

です。

角膜には知覚神経が非常に多いため、わずかな傷でも、

- 強い痛み

- ゴロゴロする異物感

- 涙が止まらない

- 目を開けにくい

- 光がまぶしい

- 視界がかすむ

といった症状が出ることがあります。

では、なぜハンディファンの風で角膜上皮が傷つくのでしょうか。

角膜は、直接空気にさらされているように見えます。

しかし実際には、その表面を非常に薄い涙の膜が覆っています。

涙は単に目をぬらしているだけではありません。

角膜の表面を滑らかに保ち、まばたきによる摩擦を減らし、乾燥やほこりなどから角膜上皮を守っています。

ところが、目に風を当て続けると涙の蒸発が速くなります。

涙の膜が途中で切れると、角膜の一部が外気に直接さらされます。その状態でまばたきを繰り返すと、乾燥した角膜上皮に摩擦が加わります。

最初は、

「少し乾く」

「目がかすむ」

「ゴロゴロする」

程度かもしれません。

それでも風を当て続ければ、角膜表面の細胞が傷つきます。程度が強くなると、角膜上皮がはがれて、角膜びらんになります。

つまり、風が角膜を直接削っているわけではありません。

実際に、人の目に風を当てて影響を調べた研究があります。

Kohらは、正常な目の人9人と、涙が短時間で切れる「短BUT型ドライアイ」の人9人を対象に、風速1.5±0.5m/sの気流を5分間当てました。

すると、短BUT型ドライアイの人では、下まぶたの縁にたまっている涙の量を示す「涙液メニスカス」の高さと面積が有意に減少しました。

つまり、もともと涙が不安定な人では、 **わずか5分間の風でも、目の表面に保たれている涙が減る** ことが確認されたのです。

また、風を受けた後には、まばたきの回数も増えていました。

目の表面が乾燥し、それを補おうとしていたと考えられます。

涙液の菲薄化や破綻には、涙の蒸発が大きく関係します。乾燥による涙液の高浸透圧化は、眼表面の炎症や細胞障害につながることも知られています。

ハンディファンだけの問題ではありません。

- 扇風機

- エアコン

- 車の送風口

- ドライヤー

- サーキュレーター

などの風を目に直接当て続けても、同じことが起こります。

正式な病名ではありませんが、私はこうした状態を、分かりやすく**「直風ドライ」**と呼びたいと思います。

普通のドライアイとの違いは、風を避ければ改善しやすいことです。

ところが原因に気づかず、乾燥した目にさらに風を当て続けている人も少なくありません。

誰でも目に風を当て続ければ乾燥しますが、特に影響を受けやすいのは、

- もともとドライアイがある人

- コンタクトレンズを使用している人

- 目がゴロゴロしやすい人

- 角膜に傷がついたことがある人

- エアコンの効いた乾燥した場所にいる人

- 目の手術を受けたばかりの人

です。

コンタクトレンズを装用している目では、涙液の状態が裸眼とは異なります。そこへ近距離から風を送り続けるのは、あまり勧められません。

ハンディファンを使ってはいけないわけではありません。

大切なのは、風を目に直接当て続けないことです。

顔の正面ではなく、首元や胸元に向けましょう。顔に風を送る場合も、目から距離を取り、同じ場所に長時間当て続けないようにしてください。

使用中に、

- 目が痛い

- ゴロゴロする

- 涙が止まらない

- まぶしくて目を開けにくい

- 急にかすんで見える

といった症状が出たら、まず風を止めてください。

症状が続く場合は、単なる乾燥ではなく、すでに角膜上皮が傷ついたり、はがれたりしている可能性があります。

暑さから体を守ることは大切です。

ハンディファンも、暑い夏を乗り切るための便利な道具です。

ただし、目に風を当て続けると、角膜を守っている涙が奪われます。

そして当てすぎれば、**「眼の皮がむける」ような角膜びらん**を起こすことがあります。

ハンディファンは、目ではなく首元へ。

**涼しい風が、涙までさらっていかないようにしてください。**

1.Koh S, Tung C, Kottaiyan R, et al. Effect of Airflow Exposure on the Tear Meniscus. Journal of Ophthalmology. 2012;2012:983182. doi:https://doi.org/10.1155/2012/983182.

2.Willcox MDP, Argüeso P, Georgiev GA, et al. TFOS DEWS II Tear Film Report. Ocular Surface. 2017;15(3):366–403. doi:https://doi.org/10.1016/j.jtos.2017.03.006.

医療法人社団久視会 いわみ眼科

理事長:岩見 久司(医学博士・日本眼科学会認定 眼科専門医)

所在地:兵庫県芦屋市公光町11-2 CH158 BLDG HANSHIN ASHIYA 2F

公式サイト:https://iwami-eyeclinic.com/

TEL:0797-35-0183

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